エポック授業

 シュタイナー教育の授業は「エポック授業」と呼ばれます。1つのテーマに従い長いスパンをかけて学びます。森の学校でも、エポック授業の考え方を基本に、隔週の学習内容を組み立てています。

 各学年90分の授業としていますが、そこでその日の主題に応じて、国語や算数、フォルメン、フルートなど各種教科内容がゆるやかに関連しながら進んでいきます。

 

 

 カリキュラムや教材はすべて教師による手作りです。子どもの成長に応じて繊細に変化し、子どもの深い学習意欲に応えられるような授業を絶えずイメージして創造します。教科書はありません。先生がが画用紙に色とりどりのみつろうクレヨンで描く絵を丁寧に写したノート(エポックノート)がその子のオリジナルの教科書になります。

1年生

7才になる1年生は、まだ幼児期から続くファンタジーの世界にゆったりと浸かっている時期。「世界は美しい」ということを、学びを通して体験します。

 

 子どもの歯の生え変わりが、「学ぶ準備ができた」というひとつのサインとなります。

 学ぶ準備が整った子どもたちは、森の学校の授業で、文字の成り立ちや数と出会います。

物語の力を借りて、聞いて想像し、教師を真似て身体を動かしたりノートに描いたりする等の活動を通じて、外から与えられた知識としてではなく、自らの内なる体験として生き生きと感じ取るよう展開しているのが1年生授業の特色です。 


2年生

2年生は、ファンタジーに浸り美しい世界との一体感を感じていた子どもたちの目が、少しずつ外に向けて開かれていく時期です。自らの内面に目を向け始める時期とも言えます。

 

 「自分と他人はちがう」という事実に気づきはじめます。動物寓話や聖人伝を授業で扱うことで、自分の内面に狡さや愚かさといった感情があることにも気づき始めることでしょう。

  内側と外側、愚かさと崇高さなど、相反する世界の中に立たされる2年生の授業の特色の1つは、フォルメンで線対称な線を描き、内面の成長と共鳴させていく内容です。

 

  また、算数のかけ算にも特色が表れています。 1年生で数字と出会い、足し算引き算を踏まえて、数量は増減することを学んできました。そこから一歩進めて、数量が規則的に増える仕組みをシュタイナー教育では「リズム」と表現し、かけ算に取り組みます。

 

 かけ算九九を暗唱させることが目的ではありません。自らの手を使い、糸かけの作業で現れる幾何学的模様を通じて「数に秘められた美しさ」を感覚的に体験していくことを大切にしています。


3年生

ファンタジーの世界から抜け出して「自分」という存在を強く意識しだし、孤独や不安を感じるようになるのが3年生の時期だと受け止めています。「小さな自我が芽生えはじめる」といえます。内面の成長を踏まえて、より外界に向かう時期ともいえます。

 シュタイナー教育では、この時期の不安定な子どもたちの心情を、旧約聖書の『創世記』になぞらえ、突然、裸で楽園を放り出されたアダムとイブの気分にたとえられます。

 

 森の学校では、この「世界の始まりの神話」を、日本の『古事記』を中心に学びます。自らが誕生して成長し外界へのつながりを強くしてきたプロセスを再体験していくのです。これと関連させて「人が生きていく上で大切な労働」を専科授業として体験し、自らの手足で外界に働きかけていくことを学びます。3年生は、このような時期の特色を色濃く表す活動を行っています。 


専科授業(3年生)

「小さな自我の芽生え」がはじまる3年生では、この時期に必要な、専科的なエポック授業がおこなわれます。

 衣・食・住という生活を支える基本的な仕事のうち、森の学校では、「米づくり」「家づくり」に取り組みます。自らの手足を使って、大地や自然環境、地域資源や職人と関わるのです。

 こうした授業や活動を通して、子どもたちの自信をはぐくみ、自立に向かっていかれるよう後押しをします。 

米づくり

 

 子どもたちは、米づくりを通して、大地にしっかりと足で立ち、手を使って世界に働きかける(為すことの価値)を学びます。


家づくり

 

森の学校では、柱が地面から立ち上がる様子の家づくりにこだわります。

 

地面からまっすぐに立つ柱の姿、その地面から真っすぐと立ち上がった柱によって支えられた家を作っていく過程に、自らの足で立ち、これからの人生に芯をもって応えていく人間として成長していく姿を重ね合わせているのです。